ビフォア・ミッドナイトの感想

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ビフォア・ミッドナイトを観ました。ネタバレしますので悪しからず。

 

■あらすじ

ビフォア・サンセットのその後を描いたもの。

 

■感想

ビフォア・サンセットの、男女二人の再会から9年後の世界を描いています。

ビフォア・サンライズから配役も実際そのまま本人たちで、18年間のリアルドキュメンタリーとなっています。

 


ビフォア・サンセットでいい感じで終わっていたので、続編は必要だったのか疑問です。

サンセットまでの2作で、だいたいドキュメンタリー映画としての結論は出ており、恋愛映画としての結論も、恋愛と結婚は違う、好き同士の二人が一緒になってもおそらく幸せにはなれないだろうという余韻を残して終わっています。

なのに実際は3作目が作られ、2人は結婚して子供もいて、うまくいかない様子を描いています。

描き方はリアルなのですが、ビフォアシリーズの流れからすると、歴史のifモノに近く、もし2人が結婚して子供がいたらこうなっていただろう、という妄想のような話に見えました。

 


物語としては2010年代の情報環境を前提とした恋愛が語られており、FacebookなどSNSがある前提での恋愛がビフォアシリーズ最初の95年当時とはまた違った形態の恋愛状況を生み出していることなどが描写されているので面白いです。

 


が、主人公たちのケンカと仲直りまでのやり取りで、少し少女漫画的過ぎるというか、男性からしたら違和感があるような描写でした。

というのも、わりと奥さんがガツガツ言いたい放題なのに対し、旦那さんは確かに振る舞いに落ち度があったのかもしれませんが、かなり誠実で寛容な態度で対応しているので、現実的にこんなに神経を逆撫でされるような発言をされているのに優しく対応できるのかは疑問でした。

リベラルな女性が妄想する理想的な男性が描かれており、現実的ではないと思いました。

 


ただ、批評的には、興味深かったです。

このビフォアシリーズを通して、映画と観客の関係性と、リベラルの実態が浮き彫りになっていくのがわかったからです。

 


シリーズ最初は男女がうまくいき、段々うまくいかなくなる。これは、映画が勢いがあり観客に愛されていた時期から、そうでなくなる今の映画が置かれる環境を描いていて、ラ・ラ・ランドのメッセージに近いものを感じましたし、今起きている、リベラルのある種のエリート意識がトランプやブレグジットを生み、大衆の本音を爆発させている状況が、最後の本作の描写と重なるのです。

 


なので、一見駄作で不要かと思った本作は、今の映画と観客との状況や、リベラルの空転を浮き彫りにしているものとして見立てることができるのが皮肉にも面白かったです。